治療内容
東洋思想に基つく医学
東洋思想に基つく医学

東洋医学は東洋思想に基ついて体系つけられました。その思想、哲学とは「陰陽」「五行」「天人合一」などです。
これらの哲学を自然発生的に起こった医療技術と結びつけられたものが、現代の東洋医学です。


これらは中国の地方や食文化の違いからも、いろいろと分けられていますが、私たちが現在日本において「東洋医学」という時は、これらの伝統医療の総称をいいます。
東洋医学は「中医学」「中国伝統医学」とも言います。
ちなみに広い意味での東洋医学というのは、中国だけでなく、トルコより東のアジア圏の伝統医療全体を指しています。チベット医学、インドのアーユルヴェーダ、イスラム圏のユナニー医学などがあります。
日本では、中国が漢の時代に、「素問」や「傷寒論」などの代表的な書物を基礎として漢方が発展してきました。
鍼灸は、東洋医学のなかのひとつでもあります。

東洋医学とは?

東洋医学の理論には「生体観念」「弁証論治」があります。


「生体観念」とは

これは、人の身体は自然から影響を受け、人の身体の内部でも、さまざまな部分が影響し合う存在であるという考え方です。
いわゆる五臓(肝、心、脾、肺、腎、)は、単独に働いているのではなく、それぞれが協調して働くことで、正常な働きを保っています。
逆に1つの臓器の働きが乱れることで、他の臓器にも影響を及ぼしています。
そのため、病気だけを見るのではなく、人間を全体として捉え、症状がたとえ1つの部位に限られたものであっても、それが局所だけの問題なのか?それとも、他の臓器と関連して起きていることなのか?
というふうに身体全体を診て治療していきます。
現代医学が人間を細かく遺伝子レベルまで、分析して治療するのに対し、東洋医学では全体のバランスを整える治療であるといえるでしょう。
もう1つの特徴は病気を治療する際の「弁証論治」です。


「弁証論治」とは

これは、病気の原因や経過を分析することで身体がどのような状態になっているかを判断し、その身体に応じた治療法を選択するという意味です。
例えば、同じ胃痛でも食べすぎによるものか、ストレスから来たものなのかでは、治療法は違ってきます。(同病異治)
また、ストレスから胃が痛くなる場合もあれば、イライラ、頭痛が起きたりする場合もあります。
これらは、「胃痛」と「イライラ」「頭痛」という全く違う症状ですが、原因は同じストレスなので、治療方法は同じになるのです。(異病同治)


中医鍼灸では、上記のような中医学の考え方をもとに、身体や病気の状態を診て、治療方針を決定し、それに応じて、気血津液や経絡、五臓六腑を調節する経穴(ツボ)を選択し、治療を行います。

気血津液とは?

東洋医学では、人間の身体は気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)の3つで構成されていると考えています。


気とは物質であり、消耗したり補充したりすることが出来るものです。
ストレスや疲労で消耗しやすく、食べ物を消化吸収することで作られた身体に補充されます。
また、身体を構成する物質であると同時に、身体の活動を行うエネルギーとしてのイメージが強いかもしれませんね。


具体的には「気」は
(1)身体の栄養となる
(2)臓器の働きを調節したり、血液や経絡のめぐりを促進する働き
(3)身体を温める働き
(4)免疫機能の働き
(5)汗や出血などにより体液や血液が外へ漏れるのを「留める」働き
(6)身体の物質を代謝して、様々な物質に相互転換させる働き

の6つの働きを持っています。


これらの6つの働きがあるので、実際には「気」が足りなくなることにより、痺れやだるさが出やすくなったり、身体を温める働きが弱まれば、冷え性につながり、免疫機能が低下すれば風邪をひきやすくなります。
また、留める働きが弱まってしまうと、過剰な発汗や内出血、女性の場合は不正出血などが起きやすくなってしまうのです。
女性は冷え性の方が多いと言われています。実際に来院されていた患者さんを見ていると、「気」の身体を温める力が低下することによって冷える方がほとんどです。


「血」とは現代医学でいう血液とは少し違ったものになります。
東洋医学でいう「血」には、
(1)身体を栄養する
(2)潤す
(3)精神活動を支える栄養源

  という働きがあります。そのため「血」が充実していれば、顔色も艶やかで皮膚にも潤いがあり、気持ちも安定しますが、不足すると貧血やめまい、顔色が暗い、冬場に皮膚の乾燥が強くなるなどの乾燥の症状が出るほか、不眠や不安感、物忘れしやすいなど、精神活動にも影響が出てくる場合もあります。
「血」は女性の月経と関係が深く、生理痛、生理不順、PMS、不妊症などの問題を引き起こす原因となったりします。


津液
気・血・水

津液とは身体を潤すきれいな水の総称であり、血液以外の「唾液・胃液・涙・汗」などが津液に当てはまると思って下さい。
水分である津液が不足すると、のどの渇きや皮膚の乾燥へとつながり、排泄が滞って古い水液となるので、痰・むくみなどの症状につながります。


経絡・経穴(ツボ)とは

ツボという言葉を聞いたことがあるかと思いますが、「ツボ」っていったい何でしょうか?
鍼灸治療ではどうしてツボに鍼や灸をするのでしょうか?


まず、経絡とは気血が流れる通路のことをいい、人体の上下、内外をめぐり、五臓六腑と連絡しています。そしてこの経絡上に経穴(ツボ)が点在しているのです。
五臓六腑に不調が起こると、その臓腑に関連した経絡の気血の流れが悪くなります。そうすると流れの悪くなった経絡上に痛み、シビレなどの症状が出てきてしまいます。
また、経絡上のツボにも硬くなる・へこむ・ざらつく等の様々な反応が現れたりします。
そのため、鍼灸師はツボに現れた反応を見ることで五臓六腑のどこに不調がでたのかを見つけることができるのです。
体表面のツボと五臓六腑が経絡によってつながっているのでツボに鍼や灸をすると、その経絡を伝わって五臓六腑や目的の場所へと伝わり、調子を整えることができるのです。つまり、ツボというのは身体の好不調の反応が出る場所であり、治療点でもあるのです。
また、ツボは鍼で刺激するだけでなく、整体や指圧などでも身体の調子を整えるのに利用されています。健康雑誌等によく「~に効くツボ」といった形で紹介されているのを目にすることも多いと思います。自分の症状にあったツボを、鍼灸師に直接教えてもらったり、雑誌を参考にしながら養生として刺激することで身体が整えられ、健康な生活を送る手助けとなります。

五臓六腑とは?

東洋医学でいう五臓六腑とは、
肝・心・脾・肺・腎の五臓
胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦
のことを言います。
これらは現代医学と同じ言葉が使われていますが、(三焦はありません)意味合いは少し違ってきます。その中でも重要な五臓についての働きを以下に説明します。


・精神活動がスムーズに行えるようにコントロールする
・血行や代謝のコントロールをする
・血液を貯蔵し、血液で筋肉を栄養する

精神活動のコントロールをしているため、過剰なストレスをうけると働きが乱れ、イライラ・落ち込み・情緒不安などの精神面に影響が出たり、自律神経が乱れて胃腸症状や血行不良、手足の冷えにもつながります。
貯蔵している血液が少なくなると筋肉が栄養できなくなり、シビレ、足がつる、爪がもろくなり剥がれやすくなる、等の症状が現れることがあります。また、目の症状も肝の問題として捕らえられます。


・精神活動の根源
・血液を全身に行き渡らせる働き
・汗をつかさどる

心はすべての精神活動を安定させる根源ですので、心の働きが乱れると、不安・不眠・情緒不安・焦燥感など精神面での症状が現れるのと同時に動悸が起こることもあります。
血液を循環させる働きが低下すると、食事をしっかりとっていても血行不良による手足の冷えにもつながります。
また、大量の汗をかいた後に心臓がドキドキしたり、緊張などにより冷や汗をかいたりするのも、心が汗と関係あることを表しています。


・消化吸収の働き
・水分代謝の働き
・食事から作った栄養物質を身体全体に行き渡らせる働き
・血液が血管から漏れ出ないようにする働き
・肌肉をつかさどる

脾は食べ物を消化吸収して気血を作り、それを身体全体に運ぶ働きを担っています。消化吸収の働きが低下すると、食欲がなくなったり、お腹を下しやすくなります。
それに加え、食事をしてもそれをうまく活動エネルギーに変換することが出来ないため、少ししか食べないのに太りやすくなったりします。いわゆる低代謝の状態です。
栄養物質を行き渡らせる働きが弱まると、身体の各部位までしっかりと栄養を届けることができなくなり、例えば、頭部に栄養がしっかり行かなければ、頭がボーっとするなどの症状が現れたり、体幹部はしっかりしているのに比べて、足が細いといった身体つきになったりすることもあります。
また、水分代謝が上手くいかないと痰がでたり、むくみにつながります。
「ぶつけた覚えはないのに、気が付くと照らしに青あざができていることがある。」
そういった方は脾の働きが弱っていて血液が漏れ出やすくなっている可能性があります。
肌肉をつかさどるというのは、皮膚や筋肉がたるまないようにハリを保つ働きのことをいいます。この働きが弱まるとシワやたるみが出来やすくなります。
「皮膚は内臓の鏡」。
脾はお肌とも関係が深い臓器なのです。


・呼吸をつかさどる
・気をつかさどる
・宣発(せんぱつ)と粛降(しゅくこう)をつかさどる
・水道通調作用
・皮毛に合し、鼻に開竅する。

他の臓器と比べて聞きなれない言葉が多く、分かりずらいかもしれません。
東洋医学でいう「肺」も現代医学と同じで呼吸の働きをしています。
空気中から清浄に気をとりこみ、脾が消化吸収して作った成分と合わさって、「宗気」という気を作ります。
この「気」は特に「心拍運動を促進する」「気血のめぐりを促す」「肺の呼吸自体を補助して発声を助ける」といった働きがあります。
そのため、肺の働きが弱まり、うまく「宗気」が作られないと、呼吸器系や循環器系に症状が現れることがあります。
宣発と粛降、水道通調作用とは、水分を全身に行き渡らせる作用のことです。
体表に水分を行き渡らせることで、潤いのある肌に保てますし、発汗も「肺」の働きが一役になっています。
また、余分な水分を腎臓に送ることで、体外に排出させる働きもあります。
肺の働きが弱まると皮膚が乾燥してカサカサになったり、運動しても汗が出にくかったり、身体のむくみにつながります。
「皮毛に合し」というのは、肺が皮膚と関りが深いことを示していて、肺の働きが不調になると皮膚に影響が現れてきます。
皮膚は外界の細菌やウイルスから身体を守る働きもしていますが、そんな時、鼻水が出るなど、肺と関係が深い鼻に症状が見られるようになります。


・先天の精
・生長・発育・生殖をつかさどる
・骨や髄をつかさどり脳を栄養する
・尿道・生殖器・肛門をつかさどる
・水分代謝
・納気をつかさどる

「精」とは腎に蓄えられているエネルギーのことで、「先天の精」(両親から受け継いだ根本的なエネルギー)「後天の精」(脾で消化吸収して出来たエネルギーから精を補ったもの)の2つがあります。
この精は成長や発育、生殖のために使われ、腎が弱いと子供の成長が遅かったり、女性では生理機能の不調(生理痛・生理不順・無月経・不妊・PMSなど)が現れたりします。
また、年齢とともにこの腎の働きは低下してくるのですが、そうすると、骨が弱くなって骨粗鬆症になったり、脳がしっかり栄養できずに物忘れが出てきたりします。
また、耳が遠くなったり、髪が白くなるのも、腎が弱って骨粗鬆症になったり、造血機能が衰え貧血になったり、脳をしっかり栄養できずに物忘れがでたりします。
尿道・生殖器・肛門をつかさどっているため、これも腎が年齢と共に弱ってくると、排尿困難・尿漏れ・夜間尿などと共に、便秘に精力減退などの症状が起きてきます。
東洋医学での「腎」は、西洋医学での腎臓と同じ水分代謝の働きもしています。
前に紹介した「脾」「肺」も水分代謝の働きがありますが、何といっても水分代謝の主役は「腎」です。そのため、働きが弱まると排尿に関する症状やむくみ、痰などの症状が現れることがあります。
納気をつかさどるというのは、深い呼吸をする手伝いをしていということです。
腎は物を納めておく働きがあります。呼吸は肺が行っていますが、腎の納める働きによって深い呼吸が出きるのです。
腎が弱まると、肺に問題がなくても浅い呼吸になってしまいます。
ここで「年齢とともに」と何度も書いてきました。この「腎」のエネルギーは、成長とともに強くなってきますが、生れたばかりの頃はまだ弱くしっかり働いてくれません。
20歳代まで成長を続け、30歳代以降は徐々に低下し、最後は完全に無くなったところで寿命となります。


東洋医学の考え方を説明してきました。新しい発見はありましたか?
当院は、こういった考え方を基本に治療を行っていくと同時に養生についてもお話させて頂いております。



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